自社メタル素材を持つ10の時計ブランド(後編)

時計のケース素材にはよく知られているステンレススティール、ローズゴールドなどがある。それではロレジウムやセラゴールド、パワーライトについてはご存知だろうか?
多くの時計ブランドが自社製のケースやムーブメント、文字盤の作りにプライドを持っているが、そのうちの一握りのブランドは長い研究期間を経て、自社製の素材開発に至り、主にケース素材として、ときには時計内部のパーツにもその素材を使用する。
前編に続き、異なる金属を融合させることによって自社製の合金開発に成功したブランドを紹介する。()  ドイツのA.ランゲ&ゾーネは「ハニーゴールド」という独自の合金を開発した。その素性はほとんど秘密に包まれているが、外観は温かみと輝きのある真鍮のようである。ランゲのCEOヴィルヘルム・シュミットによると、この傷の付きにくい素材でケースを作るのは困難を極めるため、ハニーゴールドが採用されるのは、創業165周年記念モデルである「1815ムーンフェイズ」のような少数の、ごく特別なピースに限られるということである。  
 ハリー・ウィンストンはDLCコーティングを施した独自のザリウム素材を、「イストワール・ドゥ・トゥールビヨン 4」のケースバンド、アーチ、ラグ、トゥールビヨンのベゼルに採用している。アルミニウムとジルコニウムで構成される合金ザリウムは高い耐久性と耐腐食性がある超軽量素材であり、宇宙工学の分野でも使用されている。  シャネルは、「J12 クロマティック」に独自開発素材「ベージュゴールド」を組み合わせたモデルも展開する。ベージュはシャネルを代表するカラーでもあり、この素材の開発には約4年の歳月をかけられている。J12 クロマティックには軽さと耐傷性に優れた自社開発素材チタンセラミックが用いられる。内包されるのは、約42時間のパワーリザーブを持つ自動巻きムーブメントだ。 モーリス・ラクロアは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウムそしてセラミックスの5種類の素材を合わせた自社製合金パワーライトを開発した。ここで特筆すべきは表面の仕上げのカラーバリエーションの豊富さである。パワーライトは、車両や航空機機体や建築現場での表面のカラー処理に使われている陽極処理が、他のアルミ合金よりもずっと簡単で、重量はステンレススティールの半分だが硬度は2倍である。モーリス・ラクロアはパワーライトを、2014年にバーゼルワールドで発表した「ポントスS エクストリーム」シリーズの色バリに富んだケースやベゼルに採用している。  グランドセイコーは、スプロン610と呼ばれる特殊合金の開発に5年の歳月を費やした。この素材は通常の合金に比べて耐衝撃性や耐磁性に優れ、2014年に発表した「ハイビート36000 GMT 限定モデル」に搭載されているキャリバー9S86などいくつかの自社製ムーブメントのヒゲゼンマイに使用している。このブランドは他の合金も開発しており、スプロン530などはキャリバーの主ゼンマイに使われている。スプロン530は、ハイビートムーブメントに要求される強いトルクに耐えうるゼンマイの製作を可能にし、約55時間のパワーリザーブ実現に貢献している。  素材としてはメタルではないが、スイスのウォッチメーカーの中でもセラミックの普及に深く関わってきたラドーに敬意を表して、彼らのプラズマハイテクセラミックをここでご紹介しよう。ラドーは、このメタリック調の素材を作り上げるために特許を取得したプロセスを採用している。2万℃で活性化したガスの分子が、プラズマの柱の周りに配置されたホワイトセラミックスと反応し炭化していく。これによって、温かみのある輝きを持ったメタリックなカラーへ変化する。この製造工程では表面の科学的組成のみを変え、物質そのものの構造には変化が起こらない。そのため、セラミックの利点である硬さ、キズがつきにくい点、軽量性、アレルギーが起きにくい特性などは維持される。ラドーはプラズマハイテクセラミックを、シリコン製ヒゲゼンマイを採用した「ダイヤマスター プチセコンド COSC」や「トゥルー」、「ハイパークローム」のほか、さまざまなコレクションで使用している。