【不定期連載】時計修理の現場から/屍は直るのか?「アバロン スーパーカレンダー」

 担当の高井が楽しそうな企画を始めたようだ。時計を修理してその内容を記事にする、しかも自腹でというのが意味不明なまでに誰得感があって素晴らしい。早晩ネタ切れになるかもしれないが、僕も今のうちに乗っておこうと思った。というのも、手元には死体みたいな時計しか残っていないからだ。ただ修理しても面白くないが、記事になるなら直す価値はある、というか、こんな機会でもない限り一生直すことはないんじゃないか。 まず題材に選んだのが、シチズンの「アバロン スーパーカレンダー」である。初出は1989年。プッシュボタンの操作だけで1899年から2099年までのカレンダーを呼び出せるこの超永久カレンダーは、その複雑さから、当時の時計ファンたちに注目された。以降、シチズンはアバロンのコレクションを拡大し、ワールドタイマーやアラームなどを追加したが、あまり売れなかったようだ。市場で見かけるのは、もっぱらスーパーカレンダーばかりである。 しかし初出から30年近く経った今、まともな個体を見つけるのは難しい。今回取り上げる個体も、やはりご多分に漏れず、カレンダーが壊れていた。購入したのは銀座のレモン社で、価格は2万7000円(税込)だった。壊れているのは承知で買ったが、その後ヤフオクを見たら、まともそうな個体が4万円で出品されていた。後悔先に立たず。こうなったら意地で直してやる。 アバロンが発表されたのは1989年のこと。約30年近く経った現在、シチズンはこの時計の修理を受け付けていないそうだ。とっくに部品は欠品しているはずで、修理を受け付けないのは妥当な判断である。 しかし、だ。一般的にクォーツウォッチは直せないと言われるが、ばらせるムーブメントならば修理できる可能性が高い。しかもアバロン スーパーカレンダーを載せたCal.6700は、シチズンでも屈指の高級機であり、そもそもばらせる設計を持っている。さらに言うと、アバロンは生産中止になったが、シチズンは今なお改良版のCal.6704を生産し、「カンパノラ」に採用している。であれば、修理できなくはないだろう。 今回の修理にあたっては、ふたつの基準を設けた。ひとつは、可能な限りオリジナルに戻すこと。どうせ直すなら「ぼくのかんがえるさいきょうのとけい」にしたい。そしてもうひとつは、できるだけ「パワープレー」を使わないことだ。かくかくしかじかだから直せ、と言えば、メーカーは無理して修理してくれるだろう。しかし僕はそれを使ってこなかったし、今回もできればやりたくない。 先日、GINZA SIXにあるシチズンのフラッグシップショップで講演をした。そこには時計師が常駐しており、簡単なメンテナンスが受けられるほか、修理の受付もやってくれる。ついでだから時計を持ち込み、直せるのか確認してもらった。時計師さんがムーブメント番号を入力し、画面を見ること数分。「ああこれ直せませんね」といきなりの死刑宣告をいただいた。「でも派生ムーブメントは今なお製造しているでしょう?」「ええムーブメントはたぶん大丈夫ですが、外装部品がないと思いますね」。おいいきなり挫折かよ。 というわけで、次回に続く。不定期連載なのでどうなるかは分かりません。予定は未定。パワープレーはしないと書いたものの、たぶん撤回します。 編集部の気ままに“裏”インプレッション① リシャール・ミル「RM 029 ジャパン・ブルー」 本田雅一、ウェアラブルデバイスを語る/第2回『スマートウォッチとはいったい何か?』 高級時計を取り扱う全国の正規時計販売店をご紹介。各店が行うフェア情報やニュースもお届けします!その年の新作モデルや、機構、仕上げの完成度など、毎回決められたテーマの中から、優れた10本を時計ジャーナリストたちが選出します。クロノスドイツ版の人気連載「TEST」の翻訳記事。腕時計のデザイン、機能などをポイント性によって評価します!時計の部品、機構、ブランド名など、基礎から専門用語まで、広範囲にわたって解説します。時計の知識を深めるための用語辞典です。2018.08.202018.07.05