IWC “JUBILEE” REVIEW -2-

今や、時計の最新トレンドは小径薄型だ。しかし、IWCは頑なにポルトギーゼコレクションのサイズを縮めようとしない。
同社の技術力をもってすれば、ポルトギーゼを薄く小さく仕立てることは難しくない。
ではなぜ、同社はそうしないのか。ポルトギーゼのコンプリケーションモデルから、IWCの思想を見ていくことにしよう。

 1939年に発表された「ポルトギーゼ」は、リストウォッチではなくポケットウォッチ用のムーブメントを載せることで、腕時計に超高精度を与える試みだった。同時期、IWC以外の時計メーカーも、いくつかの腕時計に懐中時計用のムーブメントを搭載した。しかし、それらは基本的に軍用であり、民生用としてリリースされたのはポルトギーゼだけだった。というのも、懐中時計用のムーブメントを腕時計に載せると、直径40㎜を超えてしまう。30㎜というサイズが当たり前だった当時、このサイズはあり得ないと考えられたのである。しかし、以降もIWCはポルトギーゼを作り続け、やがてその高精度とサイズは、ポルトギーゼの個性となった。
 1990年代に「ビッグウォッチ」のブームが巻き起こった後、ポルトギーゼはその祖のひとつ、とみなされるようになる。もっとも、多くのビッグウォッチと異なり、ポルトギーゼのサイズは、マーケティングではなく、あくまでムーブメントが規定したものだった。好例が、2000年に発表された通称「ポルトギーゼ2000」だろう。 当時IWCの会長だったギュンター・ブリュームラインは、技術陣から、ポルトギーゼ用に自動巻きムーブメントを作りたい、という要望を受けた。対して彼は次のような条件を出した。「(オリジナルのポルトギーゼに同じ)懐中時計サイズであること、そして7日間のパワーリザーブを持つこと」。ブリュームラインは、巨大なポルトギーゼのケースには、香箱の大きい、長いパワーリザーブのムーブメントが相応しいと考えたのである。 オリジナルと同じく、懐中時計並みの大きなムーブメントを載せたことは、2000年以降のポルトギーゼにユニークなキャラクターを与えることとなった。大きな香箱がもたらす約7日間という長いパワーリザーブは高い等時性をもたらし、主ゼンマイの強いトルクは、複雑機構を併載しても精度を悪化させなかった。加えて、ムーブメントの直径を拡大した結果、部品のレイアウトには余裕を持てるようになった。かつてのポルトギーゼは、高精度のために大きなムーブメントを載せたが、今やそのサイズは、普通の腕時計では得られない拡張性をもたらしたのである。