PARMIGIANI FLEURIER アニヴェルセール | [webChronos]

 創業20周年を記念してパルミジャーニ・フルリエが初めて手掛けたクロノグラフ。当初、手巻きスプリットセコンド仕様として発表された「PF361」は、基幹キャリバーとしての可能性も秘めていた。 パルミジャーニ・フルリエ(以下PF)が創業20周年を迎えた2016年に登場したスプリットセコンドクロノグラフ「PF361」。その初出時、本誌ではフレデリック・ピゲ1185との類似性を指摘した。積算計をリセットするストレートハンマーの形状が酷似していたためだ。しかしこの話はひとり歩きを始め、PF361はFP1185のコピーとの誤解も生んでしまった。しかしヴォーシェ・マニュファクチュールのムーブメント開発責任者・浜口尚大も強調するように、このムーブメントはまったくの新設計機である。概略はこうだ。 当時クロノグラフ設計の経験値を持たなかったPF(ヴォーシェも含む)では、まず設計基準となるベンチマーク探しから始めた。参考にされたのはFP1185、ロレックスの4130、そしてゼニスのエル・プリメロである。後発機の強みとも言うべきか、PF361はこの3機のアドバンテージをすべて盛り込んだ設計を持つ。まずエル・プリメロからは10振動/秒のハイビートが、FP1185からは前述のストレートハンマーが採用された。これは最もシンプルな構造で、C.O.S.C.の基準をパスするための配慮だ。しかしFP1185の輪列配置では、垂直クラッチがセンターにくるため設計の自由度が低くなる。そのためロレックス4130と同様に、PF361は垂直クラッチをオフセット配置している。なおFPもロレックスも、時積算計の駆動力を秒積算計から取っているが、PF361ではもっとオーソドックスに、香箱から直接バイパスする。積算針停止時のブレーキと、作動時の振り落ちで歩度を相殺する理屈だ。端的に言えば、FPよりも頑強で、ロレックスより高効率化を狙ったムーブメントということになる。 PF361の最大の特徴は、初期段階から秒積算針のセンターに、スプリット秒針の軸を通す前提で設計されている点だ。スプリット用のハートカムは、通常の帰零カムと同一レイヤーに配置されているため、厚みを抑えて、少ない部品数でスプリットの制御が行える。PF361がアイソレーターを備えなかった理由は、テンプ自体の等時性が高く、ハイビートのために振幅が落ちにくいためだ。積算計停止時の日差を仮にゼロとした場合、積算計作動時でマイナス0.26秒/日、スプリット作動時でマイナス1.24秒/日程度の影響(いずれもT0時)しかない。ブライトリングがアイソレーターを備えた理由は、スプリット機構をダイアル側に設けたからだろうと浜口は分析する(A.ランゲ&ゾーネの場合はそもそもがロービート機である)。  PFのムーブメントならば、審美性も重要な検討要素となるはずだが、PF361は古典的な水平クラッチとロービートを採用していない。ただし、針飛びを抑制するには垂直クラッチ以外の選択肢はなく、美観と精度を天秤にかけた場合ならば、精度のほうに傾く。これはPFとヴォーシェに共通する伝統だ。もっとも、スプリット機構をケースバック側に載せるようにリクエストしたのは、ミシェル・パルミジャーニ本人だったそうだ。浜口は「手巻きならば機構が見えちゃいますけどね……」と付け加える。 さて、ここで冒頭に戻っていただきたい。PF361の初期設計時にベンチマークとされた3機は、すべて自動巻きなのである。もしPF361からスプリットセコンド機構を取り払い、巻き上げ用のローターを載せれば、驚くほど基礎体力に優れた自動巻きクロノグラフの基幹キャリバーができ上がる。というよりも、このムーブメントは初期段階から自動巻きとして設計されたと見るべきだろう。
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