この世ならぬ美味のクリエイター / 真味只是淡で新境地へ誘う

2017年2月に開店するやいなや話題を集め、年末には初登場にしてミシュランふたつ星を獲得した中国料理店。南麻布の住宅街に佇む一軒家に、食通がこぞって通う。 中国料理であることは間違いないのだが、時折ふと日本料理を食べている錯覚に陥る。それは、料理人・川田智也氏の経歴と食材に対する姿勢によるところが大きい。「麻布長江」で10年間じっくりと中国料理の研鑽を積むと、続いて「日本料理 龍吟」へ。日本という場所で料理をする以上、日本の食材や日本料理を理解しなければいけないという強い思いがあった。そこでは、中国料理では経験できない緻密な食材の扱いや炭火焼きの技法を学び、現在「茶禅華」の厨房で存分に活かされている。「真の味は淡に宿る」を信条に完成する料理たちは、潔く静かな佇まいながら、記憶の残る滋味を伴う。「甲魚鶏翅」は、手羽が葱の巣で眠るような一皿。「20代の時、四川で食べた『亀鳳湯(亀と若鶏のスープ)』を自分なりに解釈した料理です。現地で食べた時は、美味しさよりも滋養強壮の意味合いが強い印象を受けました」と、立派な中国料理の書物を見せてくれた。そこには、大きな皿に鶏と亀が丸ごと鎮座する写真があり、姿形は似ても似つかないのだが、目の前にある艶やかな手羽は紛れもなくここから導かれたもの。 本場の料理、食材、お茶、器を求め、川田氏は15年以上にわたり、度々中国へ足を運んでいる。実際に体験した古典料理や本場の味わいに、日本の食材と自身の感性を重ねることで「茶禅華」の料理に昇華する。単に美しいだけではない。美味しいだけでもない。だから、食べ手の心にまで響く。これからも生み出され続ける彼にしか作ることができない料理が待ち遠しい。「 最適な温度で提供することによって、香りが立ち、味の立体感が生まれます」との言葉通り、贅沢な空間でありながら、まるでカウンター越しのように料理人の思いが伝わってくる。それは、スタッフのチーム力の素晴らしさゆえ、全員が同じ方向を見据えているからだ。「茶禅華」で食事をすると全身が満たされ、店を出てからも長らく幸福な余韻に包まれている。