文字盤はキャンバス:アーティスティックなコラボレーションから生まれた6本の時計(後編)

現代または歴史的なアーティストたちとのコラボレーションやトリビュートとして、は自らのタイムピースを通し、長い間培ってきた伝統的技術に基づいて、アーティストたちの傑作をその文字盤に再現し、個性を打ち出しているウォッチメーカーがある。文字盤をキャンバスとした時計を、前編に続き紹介する。() 2018年はスイスの高名な、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した印象派画家フェルディナント・ホドラー(1853年~1918年)の没後100周年にあたる。スイスウォッチブランドのジャガー・ルクルトはこのマイルストーンを記念して、限定版のレベルソを自社の「メティエ・ラール」の工房からレベルソ・トリビュート・エナメルとして発表した。
 それぞれが世界限定8本の3モデルから構成される。1本1本のケースバックには目を奪うようなホドラーの作品を細密画として再現し、複雑なエングレービングとエナメル技法そして細密画の組み合わせによって見事に描出している。文字盤には「菱形」モチーフが、100年近い時を経たギヨシェマシンを使う熟練した職人の手によって丁寧にエングレービングされ、ケースバック側の細密画で最も多用されている色を反映した透明なグラン フー エナメルで覆われている。
 細密画は縦3cm、横2cmの限られた面に描かれて、エングレービングによって入り組んだ線のデザインが施されたレベルソの特徴的なゴドロンのフレームに収められている。描かれているのはホドラーの、そしてジャガー・ルクルトの故郷スイスの風景である。
 アールデコにインスパイアされた長方形のケースはホワイトゴールド製で、サイズは縦45.5×横27.4mm、厚さは9.73mmである。文字盤のファセットが施されたアプライドのアワーマーカーやドーフィン針、レイルウェイミニッツインデックスなどもレベルソのアイコニックな要素だ。ケース内ではジャガー・ルクルト自社製の手巻きキャリバー822A/2が鼓動している。  コルムは、ヘリテイジ アーティシャン コインウォッチにおいて、まるで「兄弟、今、時間あるかい?」と問いかけているようなタイムピースを作り上げた。
 文字盤の作者はロシア生まれでニューヨークを拠点に活動するマスターエングレーバー、アレクセイ・サブーロフ。大恐慌時代に仕事を求めて各地を転々とする労働者によって生まれた手作業の彫刻による大衆アート、バッファロー・ニッケルとも呼ばれるホーボー・コインを現代的に解釈したものだ。
 すべてがユニークピースである。サブーロフはすでに1本を製作しているが、他に何枚のオリジナルモチーフの文字盤が作られたかは公表されていない。緻密にエングレービングが施されたアメリカの銀貨が、「大衆的な創造性、伝説、悪魔、(そして)信頼をもって、独自の作品としての緻密なアートを成し遂げる」というアーティストのスタイルに従って、文字盤に仕上げられている。
 直径43mmのケースはシルバー製で、サファイア製カボションが付いたリュウズやコインエッジのベゼルが備えられている。時分針はシンプルなバースタイルで、文字盤にエングレービングされた創造性をなるべく邪魔しないよう配慮されている。
 1ドル硬貨を2分割にスライスし、中にソプロードA10をベースにした自動巻きキャリバーCO082を搭載している。パワーリザーブは約42時間だ。ケースバックには1USドル銀貨が使用されている(もちろん長い間コルムのファンであった方には、特に1955年発表の20USドルのゴールド製ダブルイーグル・コインダイアルウォッチに始まる歴史だということにお気付きだろう)。ヘリテイジ アーティシャン コインウォッチにはデニムストラップが組み合わされ、それが20世紀初頭にホーボー・コインを大衆アートとして世に広めた、アメリカの労働者階級が身に着けていたジーンズを密かに象徴している。  帽子とバンダナで顔を隠し、ストリートからアートを発信するのが、ニューヨークで活動するストリートアーティストであるアレック・モノポリーのスタイル。彼の名前とスタイルの由来になったのは有名なボードゲームの主人公、”Mr. Monopoly(ミスター・モノポリー)”だ。アレック・モノポリーは2016年からタグ・ホイヤーと手を結び、その作品をリミテッドエディションモデルのストラップや文字盤に描いてきた。そして本モデルのように、コネクテッドウォッチのデジタル文字盤のデザインも手掛けた。
ケースは直径45mmのチタン製で、50mの防水性を持つ。ケースバックにはシリアルナンバーと、リファレンスマークがレーザーでエングレービングされる。