GS威風堂堂

 グランドセイコーを代表する傑作ムーブメントが、9Fクォーツである。年差±10秒という超高精度に加えて、機械式ムーブメントに匹敵する強大なトルク、そして理論上は約50年間油切れを起こさない超耐久性は、スタンドアローンで駆動するムーブメントとしては、最上級のひとつだろう。9Fクォーツ誕生25周年を迎えた2018年は、新しくGMT機能を追加。その驚くべき内容は、傑作9Fクォーツに相応しいものだった。
 クォーツムーブメントは高精度だが、半面、針を動かすトルクは大きくない。そのため、針を動かすモーターを増やす以外、機能を追加する方法はなかった。ほぼ唯一の例外が、1993年初出のグランドセイコー9Fクォーツである。誕生25周年を迎えた2018年、機械式ムーブメントに匹敵するその強大なトルクは、GMT針と時針の単独修正機能を加え、それに連動した日付の先送り・逆戻し、さらに、瞬間日送り機能の共存を可能にしたのである。 2018年に登場した9FのGMTモデルは、GMT針による第2時間帯表示と時針の単独修正機能、そして時針の単独修正に連動した日付の先送りと逆戻し機能を持つ。これらはクォーツムーブメントに載せるのが難しい機能だが、9Fの強大なトルクがそれを可能にした。加えてこのモデルには、9Fの特徴である瞬間日送り機能が残された。当たり前に思えるが、時針の単独修正に連動した日付の先送りと逆戻し機能を持つムーブメントで、瞬間日送り付きのものはほぼない。使い勝手はいっそう優れるが、これらの機能の共存はかなり困難なのだ。 9FクォーツにGMT機能を加えたのは、セイコーエプソンのウエアラブル機器事業部に所属する小池信宏氏。9Fの開発から携わってきた、いわば生き字引である。「9FにGMT機能と時針の単独修正機能を加える計画は、9F発表当初からありました。年差±10秒という高精度を実現したのに、時差修正のたびに時計を止めるは惜しい。瞬間日送り機能がなければ、これらの機能を加えるのは容易です。でも、9Fの特徴である瞬間日送り機能をやめてまで、時針単独修正機能を付加する気はありませんでした」 時針単独修正機能に連動して、日付を先送り・逆戻しさせるには、筒車に連結して1日に1回転する日回し車に突起を付け、日付表示をひっかけて回すだけだ。設計はさほど難しくない。一方の瞬間日送りは、筒車の回転でバネにトルクを蓄積し、それを解放する力で日付表示を瞬時に動かす。時間をかけてバネをチャージする瞬間日送りと、日回し車の突起で引っ掛けて短時間で日付をじわりと先送り・逆戻しする時針単独修正機能は、設計が別物であり、その両立はかなり困難だ。