ロジェ・デュブイのデザイン的挑戦

これまでに数多くの時計ブランドが自動車メーカーとコラボレートしてきたが、その中で大きな成果を上げることができた例はあまり多くない。しかし、積極的にランボルギーニやタイヤサプライヤーのピレリと限定モデルを発表し続けるロジェ・デュブイに関しては、その限りではなさそうだ。その差がどこにあるのか。ヒントは明確な記号化にある。

 機械式時計の愛好家には、自動車好きが多い。そして、時計とクルマに多大な情熱と時間、費用を費やす人は少なくないと聞く。 それならば、と、古今東西、多くの時計ブランドと自動車メーカーが手を組んで、コラボレーションモデルの製作に挑戦してきた。しかし、〝クルマらしさ〞という記号を時計に与えることは難しく、ダイアルにブランドロゴがふたつ描かれているだけというものがその大半だった。 そんな中で、果敢にもクルマの要素を取り入れたウォッチメイキングを積極的に展開しているのがロジェ・デュブイである。同社は22017年にイタリアのタイヤサプライヤー、ピレリとのパートナーシップを結ぶと、スポーツカーメーカーであるランボルギーニのレース部門、スクアドラ・コルセとも同年に手を取り合い、それぞれのコラボモデルを発売。ピレリとの限定モデルでは、F1の各レースにおけるウィナータイヤをストラップの素材として使用することで、モータースポーツファンの獲得を進めている。近年では、スポーツカーやレーシングカーと同じ素材を時計にも使用する手法は一般的と言えるが、実際にF1で使用された素材そのものを流用しているのは同シリーズくらいのものだろう。 ランボルギーニのフラッグシップ車名を冠した「アヴェンタドールS」シリーズでは、〝猛牛〞エンブレムを使うことなく、同車の猛々しさを見事に表現している。クルマのエンジンに当たるムーブメントには、シリンダーヘッドカバーに見立てた香箱受けや、その上に鎮座するクロス型のタワーバーなど、アヴェンタドールSのV型12気筒をかたどった趣向が凝らされているのだ。 これらふたつのシリーズに共通して言えるのは、クルマの要素を記号化し、モータースポーツの高揚感を表現している点にある。ストラップの表面を平滑にせず、レース後のスリックタイヤを生々しいほどに再現した前者。今や絶滅危惧種と言える12気筒エンジンのデザインを用いて、その爽快なエンジンフィールを想起させる後者。明確な記号によって、モータースポーツファンが興奮するほどの説得力を持ったことが、コラボ成功の理由だ。


Contact info: ロジェ・デュブイ ☎03-4461-8040