ロレックスについて知っておきたいポイント(後編)

 ロレックスの腕時計についてコレクター人気の高さを述べる際、ジェームズ・ボンドのサブマリーナーの対抗馬として「ポール・ニューマン」ダイアルのデイトナが挙がるだろう。もともとはデイトナの前身のモデルに、特徴ある文字盤を合わせたものであった。なじみの薄い発売当初はあまり売れないものであったが、それは現在見つけるのが非常に難しいことをも意味する。 この珍しい文字盤の生産は1960年代半ばに始まっており、6239、6241、6262、6264、6263、6265という6つのリファレンスとして存在する。文字盤はブラックとホワイトの2色使いとなっており、文字盤によっては赤が3色目のカラーとして使われている。その他デザイン面については、サブダイアルのインデックスはアールデコ調の数字で書かれており、中には目盛りの先端に四角が配されているものもある。 カルト的人気を誇る腕時計の常として、どのようにセレブリティとの関わりがあったのかは不透明である。一説にはトップクラスのイタリア雑誌の表紙をポール・ニューマンが着用して飾ったとも言われている。ポール・ニューマンが、この特別な文字盤を採用したデイトナを着用している写真はいくつかあるが、元となったイタリアの雑誌の表紙についてははっきりしないことから、事実であるとは考えにくい。他の説では、ポール・ニューマンがこの時計を着用したものが映画『レーサー(Winning)』の宣伝ポスターとして使われたというものもある。このポスターは実在するため、雲をつかむような話ではないことが分かる。しかし両者の関係性は疑う余地はなく、ステンレススティール製「ポール・ニューマン」ダイアルのデイトナは、同じモデルのゴールド製以上の価値があるという揺るぎない事実がそこにある。
 ロレックスと密接な関係のあった別の人物の名は、俳優でありレーサーであったスティーブ・マックイーンだ。マックイーンの名前はよくRef.1655のエクスプローラーIIと合わせて語られる。オリジナルのモデルには大きなオレンジの針が採用されていた。ただマックイーンがその時計を着用している写真は現存しないため、どちらかというとディーラーたちが話を盛り上げるために、マックイーンとのつながりを構築したのではないかと考えられている。 マックイーンが着用している姿を写真に多く撮られていたものは、Ref.5512の日付表示なしのクロノメーター認定のサブマリーナーであった。2009年にニューヨークで行われたアンティコルムでは、マックイーンが個人で所有していたRef.5512が23万4000USドルで落札されている。
 世界の海の中でも最も深い場所はマリアナ海溝であり、その最も深いところはチャレンジャー海淵と呼ばれ、海底は水面から1万916m下に位置する。ロレックスはこの深海をジャック・ピカールとドン・ウォルシュと共に、スイスで設計された深海潜水艇トリエステ号で海底を目指した。トリエステ号の外装部分には特別に作られた「ディープシー スペシャル」と呼ばれるロレックスが取り付けられていた。この深度では、気圧は1086バール(1万5750psi)ともなる。海面に浮上した際にピカールはハンス・ウイルスドルフに宛てて「時計は水深1万1000mにあっても、海面上と同じ精度で動作していることを確認できてうれしい」という電報を打っている。
 ロレックスは映画作りのパートナーとして2012年3月にジェームズ・キャメロンの探査隊と共にチャレンジャー海淵を訪れ、時計は再び潜水艇外部に取り付けられた。この時計は「ロレックス ディープシー チャレンジ」と、ジェームズ・キャメロンのプロジェクト名「ディープシー チャレンジ」にちなんで呼ばれていた。1960年にトリエステ号と共に探査に参加したディープシー スペシャルは、技術的にも構造的にも新たなプロフェッショナルダイバーズウォッチの青写真となり、2008年の新しい「ロレックス ディープシー」に反映されたのである。ロレックスはこの探査用時計のデザインと製造を2カ月以内に完了し、時計はキャメロンの潜水艇のロボットアームに取り付けられ、最深部に到達したのである。 ロレックスはキャメロンの潜水を記念し、「ロレックス ディープシー D-BLUEダイアル」を再び世に送り出した。「ロレックス ディープシー」をベースに、12時側から6時側へかけてディープブルーからブラックへとグラデーションで色を表現した特別な文字盤を採用した。このデザインは、海面から深海へと移り変わっていく海の色を表現している。