アメリカ合衆国大統領とその時計(中編)

アメリカ合衆国歴代大統領から現在のドナルド・J・トランプまで、どのようなブランドがその手首とベストを優雅に飾ってきたのだろうか。
その物語は、マリリン・モンローがジョン・F・ケネディに誕生日のプレゼントとして、”JACK / With love as always / from / MARILYN / May 29th 1962″という銘が刻まれたゴールドのロレックス” title=”ロレックス”>ロレックスを贈ったことで一層注目を集めるようになった。大統領の歴史はこのように、時計好きならきっと誰もが興味を持つであろう時計絡みの話題に彩られているのである。
初代のジョージ・ワシントンから第29代のウォレン・ハーディングまでを振り返った前編に続き、歴代大統領と彼らのタイムピースについて今回は中編を届ける。()  フランクリン・デラノ・ルーズベルトは、文字盤に”Tiffany&Co.”と記され、内部にモバードのムーブメントを搭載したカレンダーウォッチを身に着けていた。彼は他にもジュネーブに拠点を置くA. Frankfeld companyの懐中時計も所持しており、FDRのイニシャルも刻まれていた。裏蓋には、”Presented to/President Roosevelt/by/Dr. Boldan/Former Minister of Education/at Dinner of/Lions Club of Havana on/January 30, 1942.”と記されている。 第2次世界大戦直後、ドワイト・D・アイゼンハワー(1953年、第34代アメリカ大統領就任)はドイツに滞在した時にステンレススティール製で30分積算計と12時間積算計を備えたホイヤーのクロノグラフ搭載の腕時計を購入している(クロノグラフを得意としたホイヤーは、現在のタグ・ホイヤーの前身である)。
 アイゼンハワーはロレックスのデイトジャストも身に着けていた。ロレックスファンの中には、ジュネーブのロレックス本社がアイゼンハワーに2本目の時計として、デイデイトモデルを1956年の再選を祝ってプレゼントしたのでは? と言う人たちもいる(ちょうどその年、ロレックスはデイデイトを発表している)。彼らによると、デイデイトはアイゼンハワーのおかげで、アメリカにおいて「プレジデント」という愛称で知られるようになったという。 ハリー・S・トルーマンはファッショントレンドの中にいる人物ではなかったが、どうやら時計については例外であったようだ。1945年の夏、23日間続いたドイツの行く末を決めるポツダム会議の場で、トルーマンは当時最もよく知られていたクロノグラフ、ユニバーサル・ジュネーブのトリ・コンパックスを着けていた。ユニバーサル・ジュネーブはその前の年にこの時計を発表していた。複雑ではあるがエレガントな佇まいに、この時計は非常に多くのファンを持っていた。3・6・9時位置に3つのスモールダイアルを備え(これがモデル名の由来となっている)、ムーンフェイズ表示と指針式の日付表示を12時位置に配し、さらに月表示と曜日表示を持つトリプルカレンダームーンフェイズクロノグラフであった。トルーマンが所有していたのは、そのゴールドバージョンであった。トルーマンは他にもスイスの会社であるギャレット製のフライング・オフィサーズ・クロノグラフを所有していた。世界でどの時間帯にいるのかが分かる回転式ベゼルを搭載したこの時計は1939年に執務室のふたりの職員によって贈られたものである。  副大統領になることで何かしらの恩恵に浴することがある。リチャード・ニクソンがこの職に就いた時、NAWCC(National Association of Watch and Clock Collectors)でスピーチを行った際に謝礼として、目覚ましとして十分な音量を持ったヴァルカンの、アラーム機能を持った最初の腕時計として広く知られているクリケットをもらっている。1969年に初めて大統領となった時に、ニクソンはヴァルカンに手紙を書き、その中で「この5年間、時計は非常に良い状態で動き続け、世界中で私のアラーム時計として活躍してくれた」と述べている。 1961年1月20日、執務室の主となったジョン・F・ケネディが身に着けていたのはフロリダの議員グラント・ストックデイルから贈られたオメガのウルトラシン(Ref.OT3980)だった。ケースバックには、”President of the United States John F. Kennedy from his friend Grant”と刻まれている。ストックデイルは楽観主義者であったのであろう。彼はその時計をケネディが僅差で勝利を収める何カ月も前の、前年の夏に贈っていたのだから(2005年12月、スイス・ビエンヌにあるオメガ ミュージアムはその時計をオークションで42万USドルで競り落としている)。
 ジャクリーン・ケネディはストックデイルへギフトに対するお礼の手紙を書き、それを優雅に「自分がケネディに贈った時計よりも素敵な」と表現している。彼女がどんな時計のことを指しているのかは分からないが、ジャクリーン・ケネディは自分の夫にカルティエのタンクウォッチを1957年の結婚4周年の記念にギフトとして贈っている。1963年に暗殺された時、ケネディはこの時計を着用していた。
 ケネディは他にも、もう1本特別なギフトとして時計を受け取っている。ペンシルバニアの州知事であったデビッド・ローレンスから1962年に贈られたハミルトンだ。その文字盤にはケネディの子供たち、キャロラインとジョンの名が刻まれていた。(続く)