ハリー・ウィンストン 「女もすなるダイヤモンドウォッチ といふものを男もしてみむ」

その光り輝くイメージ故か、なかなかダイヤモンドを手に取りにくいという男性も多いだろう。
しかし、“ダイヤモンドウォッチ”を職人たちによるクリエイションの表徴と捉えた時、
女性と男性の垣根を越えた、実に興味深い新局面を発見できるのではないだろうか。
ジュエラーによる時計業界への参入とウォッチメーカーによる宝飾技術の強化が、これまでとは異なる新次元のダイヤモンドウォッチを生む。
 ダイヤモンドが初めて登場した文献とされるのが、古代ローマの学者、プリニウスによる「博物誌」である。その中において、ダイヤモンドはその語源でもあるギリシャ語の「強きもの」と呼ばれ、他の素材を削るための硬い特性が珍重されてきた。そんなイメージから、身を守るタリスマン的な扱いを受けてきたダイヤモンドだが、14世紀後半以降、研磨師によるカッティング技術の進化により、テーブルカットやローズカット、18世紀にはラウンドブリリアントカットが与えられ、輝きをたたえた装身具としての宝飾品の様相を強めていく。 かつてはほぼ無研磨に近い、輝きのない正八面体のフォルムが価値を持った宝石が、カッティングの進化とともに〝ジュエリー〟としての表現方法を高めていったように、宝飾技術が成熟の域に達した現在、男性の矜持を象徴する道具であり、また数少ない装飾品でもある腕時計で新たな表現を目指すのは実に自然な流れと言える。女性用の本格的な腕時計の台頭と男性用の宝飾時計の多様化――それらを誘引した要因のひとつが、ジュエラーによる時計業界への進出である。