マイクロローターと複雑時計 / [マイクロローター新時代]コンプリケーションのプラットフォームとしてのマイクロローター

市場が薄型時計に目を向けるようになって以降、複雑なコンプリケーションを、厚いケースに収める従来の手法は、変化を強いられつつある。複雑な機能を薄いケースに収めて欲しいという市場の声は、かつては薄くて、ある程度の頑強さがあれば良かったマイクロローターに、コンプリケーションの土台としても使えるだけの基礎体力を求めるようになった。そんな新しいマイクロローターの好例が、ロジェ・デュブイとヴァン クリーフ&アーペルである。
 薄型ムーブメントをコンプリケーションのプラットフォームに使うのは定石である。事実、パテック フィリップは、1977年にリリースしたキャリバー240に、すぐに永久カレンダーモジュールを載せるようになった。90年代にマイクロローターで大きな成功を収めたショパールも、やはりさまざまなモジュールを、マイクロローター自動巻きの上に重ねた。 ただし、マイクロローター自動巻きをコンプリケーション化するというアイデアがさほど普及しなかったのは、ローターと香箱がともに小さいマイクロローター自動巻きに、コンプリケーションを動かせるだけのトルクはない、と多くのメーカーが考えていたためである。しかも、コンプリケーションを載せたがるような老舗は総じて保守的な設計を好み、つまりはトルクのマージンを過剰に取りたがったのだ。